ちばダブル選挙の振り返り③ 投票率と得票率の関係

ここで投票率と熊谷氏と関氏の得票率との関係について、確認してみましょう。市町村別の各氏の得票率、同じく市町村別の熊谷氏と関氏の得票比率などの数値を算出し、市町村別の投票率や投票率の前回比の数値との相関値を求めてみました。

そうすると、投票率よりは、投票率の前回比の数値が、「熊谷氏の得票割合」と「熊谷氏と関氏の得票比率」との間での相関値が0.5~0.7の間に入っているので、強いとは言えませんが「相関がある」ということがわかります。

もちろん、相関関係は、原因と結果を説明する因果関係を説明するものではないので、投票率が前回から増加したから、熊谷氏の得票割合が増加した、投票率が前回から増加したから、熊谷氏と関氏の得票比率が増加した、という説明はできません。しかし、投票率が前回よりも高い市町村では、熊谷氏の得票割合や熊谷氏と関氏の得票比率も、ある程度高いということは言えると思います。

表では、市町村別の熊谷氏の得票割合が高い上位20位までの市町村(千葉市は区別)をまとめたものです。投票率は、千葉市の各区は10ポイント以上の増加となっていますが、その他の市町村も大きく増加していることがわかります。

一方、2017年の選挙では、森田氏が内房・外房の市町村で得票を重ねていたことがわかります。(この傾向は、森田氏の3回の選挙を通じた傾向と言えます。)

今回の選挙では、千葉市を中心とする都市部の投票率が大きく増加したこと、また、その都市部で多くの有権者が熊谷氏に投票したことが、1,409,496票という過去最高の得票数につながっているように考えられます。

出所:千葉県選挙管理委員会

ちばダブル選挙の振り返り② 佐倉市で何があったのか?

今回の千葉県知事選挙の投票率は、38.99%でした。2001年以降の県知事選挙の投票率としては、高い方からも低い方からも3番目の数字となりました。(今回の選挙は、2001年以降、6回目の選挙となりました)。

2001年以降で、最も投票率が高かったのは、森田健作氏が初めて当選を決めた2009年の選挙(45.56%)で、森田氏のほか、吉田平氏、白石真澄氏などが出馬しました。次に高かったのは、2005年の選挙(43.28%)で、堂本暁子氏の2選目で、森田氏が初めて出馬し、約6000票の差で堂本氏が再選を決めた選挙でした。そして、今回の令和3年の選挙が3番目となります。
また、市町村別で見ると、2005年以降、1位であった東金市が2位となり、同じく2009年以降、2位であった鋸南町が1位と逆転しました。また、千葉市美浜区が3位になりました。

ダブル選挙となった千葉市では、前回選挙と比較して、14.08ポイントの増加となりました。一方、浦安市では、前回選挙と比較して、0.62ポイントと、大きな増加にはなりませんでした。ただ、これは浦安市は、前回も松崎市長の県知事選挙出馬による辞職に伴うダブル選挙となっため、前回も投票率が増加したことが理由であると言えます。東金市の投票率が高いことも、市議会議員選挙とのダブル選挙であると言えます。

このようにダブル選挙は、投票率を高める効果があるということを、今回の千葉市の投票率からも推定できます。また、選挙事務負担や費用の効率化という点でも、ダブル選挙は意味があると言えます。

興味深いのは、佐倉市です。今回の選挙で、10ポイント以上の増加となったのは、千葉市と佐倉市の両市です。千葉市は、上記のようにダブル選挙であったことが理由として考えられますが、佐倉市では、市長選挙も市議会議員選挙も行われておらず、県知事選挙だけです。一体、何が起きたのか、大変興味があります。

なお、投票所別でみると、山王小学校投票所で51.87%、佐倉東中学校投票所で51.78%、臼井南中学校投票所で50.44%でした。

出所:千葉県選挙管理委員会

ちばダブル選挙の振り返り① 政治的資本

千葉県知事選挙、千葉市長選挙の投開票日から一夜が明けました。熊谷俊人氏は、1,409,496票を獲得し、全体の70.5%の得票率という圧倒的な勝利となりました。

選挙での得票は、その後の政策を推進していくための源泉である「政治的資本」になります。今後、熊谷県政を推し進めていくためには、議会の過半数を占めている自民系会派との関係が焦点となりますが、今回の選挙結果は、直近の民意として、議会との関係にも大きな影響を与える結果となったと言えます。

さて、ここで「政治的資本」という言葉を紹介しておきます。「政治的資本」とは、政権や首長が政策を推進するための資源と言えると思います。具体的に言えば、民意(支持率や直近の選挙結果)であったり、信頼関係であったり、ネットワークであったりします。
民主主義社会においては、決定よりも、むしろ決定までのプロセスが重要であると考えます。最終的には、何かしらの決定をしなければいけないのであれば、決定にあたって、皆がそれなりに納得できるものであるのか、合意できるものであるのか、または、その手続きは適正であったのか、ということが問われます。

その決定プロセスにおいて、様々な交渉が行われたり、調整が行われたり、説得が行われたりします。その時に重要となるのが、政権が政治的資本をどのぐらい有しているのか、ということになります。

反対の立場をとる人々も、政権や首長の政治的資本が大きければ、例えば、民意(支持率や直近の選挙結果)を踏まえた対応をせざるを得ません。一方、政権の政治的資本が小さければ、政権に徹底的に対峙することもあり得ましょう。

一方、世論を二分する議論で、政治的資本を使って、何かしらの決定をした場合に、その政治的資本は費やされます。大なり小なり、時間の経過とともに、政治的資本は変わっていきます。

選挙とは、政権や首長に、政治的資本を与える機会でもあると言えます。つまり、単に当選者を決めるための機会でなく、一人ひとりの一票は、その後の政策の推進に、どのぐらいの力を与えるのかということになるので、一人ひとりの一票には、大きな意味があるのです。


※図は、市町村別にみた熊谷氏の得票割合。(出所:千葉県選挙管理委員会)。特に、千葉市を中心に都市部での得票割合が高いことがわかります。

千葉県知事選挙 Policy Debate 2021

今回、ちばでも実行委員会では、下記、千葉県知事選挙特別対談「市議会議員&若者からみた千葉県知事選から千葉の未来について語り合おう~」において、参加した県内の大学生、パネリストの市議会議員の方たちと一緒に、若者世代や市町村の立場から、県知事候補の皆さんへの政策提言をまとめ、お送りしました。
お忙しい中、若者世代からの提言に耳を傾けていただき、そして回答にご回答いただき、ありがとうございました。心より、感謝申し上げます。

各候補からのご回答

熊谷 俊人 氏

回答を頂きました。回答は、こちらです。

後藤 輝樹 氏

回答を頂きました。回答は、こちらです。

加藤 健一郎 氏

連絡先が不明で、アンケートを送付できておりません。

金光 理恵 氏

回答を頂きました。回答は、こちらです。

皆川 真一郎 氏

回答を頂きました。回答は、こちらです。

関 政幸 氏

回答を差し控えるとの連絡を頂きました。

平塚 正幸 氏

未回答です。(3月20日正午時点)

河合 悠祐 氏

未回答です。(3月20日正午時点)

政策提言

(1)県と政令市との連携を強化し、二重行政の問題を解消するため、「県市戦略協議会」の設置を!
(2)県と市町村、産業界・大学等との連携を強化するため、「ちば戦略会議」の設置を!
(3)県内市町村間の連携を促進するため、自治体間協定を締結した地域に、上乗せ補助金の交付を!
(4)県の取り組みについて、こども・若者の意見を聴取したり、こども・若者のアイディアを実現したりするためのサポートをするなど、こども・若者の意見を県政に反映させるために「ちば若者政策会議」の設置を!
(5)CO2削減を目指し、東京都や埼玉県が実施している「キャップ・アンド・トレード制度(目標設定型排出量取引制度)」を導入し、早期に、東京都と埼玉県との連携協定の締結を!
(6)北総線、東葉高速鉄道に関して、住民の運賃負担の軽減策について、国とも協議し、県・市町村と連携できる仕組みを!(羽田・成田の一体化運用にも寄与するように)
(7)「千葉の元気応援プロジェクト」(各地域の魅力を高める取り組みや地域の課題を解決する取り組み)を立ち上げ、アイディアコンテストを実施し、助成をしていく仕組みを!
(8)千葉県男女共同参画条例の制定を!
(9)多文化共生推進プランをさらに発展させ、千葉県多文化共生推進条例の制定を!
(10)発達障害、知的障害を抱える方の就労支援の充実や農福連携(ソーシャルファーム)の取り組みの推進を!
(11)災害発生時に、県と市町村、市町村間の情報連携とコミュニケーションを円滑に進めるため、IoT技術を活用した情報ネットワークの構築を!

パネリスト:
水野実氏(千葉県浦安市議会議員) 
高山敏朗氏(千葉県八千代市議会議員) 
山本直史氏(前千葉県千葉市議会議員) 
VOTE FOR CHIBAメンバー
淑徳大学コミュニティ政策学部矢尾板ゼミ学生
モデレーター:矢尾板俊平(淑徳大学コミュニティ政策学部教授)

東日本大震災から10年

東日本大震災から10年が経過しました。
亡くなられた方々に、謹んで哀悼の意を捧げますとともに、ご遺族の方々に心からお悔やみを申し上げます。
現在も避難生活を余儀なくされている方々に、心からお見舞いを申し上げます。また、震災から10年間、復旧復興にご尽力をされている全ての皆様に心から敬意を表します。
東日本大震災後、初めて東北地方に伺ったのは、5月のGW後でした。伺ったのは、宮城県雄勝町で、大学のボランティア活動に参加するためでした。また、5月25日には、当時の三重県松阪市長 山中 光茂 さんや佐賀県武雄市長 樋渡 啓祐 さんを初め、全国の首長や企業関係者の皆さんが発足させた「ハートタウンミッション」の活動で、岩手県陸前高田市に伺いました。
当時の写真や8月に訪問時の動画を編集して動画を作成しました。

また、政策研究フォーラム「改革者」2021年3月号(3月1日発行)の巻頭インタビューにて、岩手県陸前高田市の 戸羽 太 市長と対談をさせていただきました。テーマは、「東日本大震災から十年 復興の現場で振り返る」です。東日本大震災から10年の陸前高田市の取り組み、「ハートタウンミッション」の活動、そして、これから。Zoomでのインタビューにご協力をいただきました。

これからも東北地方の創造的復興を応援していきたいと思います。

千葉県知事選挙特別対談「市議会議員&若者からみた千葉県知事選~千葉の未来について語り合おう~」

市や世代を超えて語り合うことにより、3月21日投開票日を迎える千葉県知事選挙を、異なる視点から捉え、今後の千葉県政の課題や期待することを深掘りしていくことが目的です。主要3候補の政策を比較すると、大きくは10の論点に整理できると思います。その中で、今回、議論をしておきたい論点のひとつに、県と市町村との連携、県と政令市との関係があります。県と政令市との関係においては、「大阪都構想」など、大都市制度の問題として、全国的にも議論を重ねていく必要がある論点であります。また、今後、地方創生や地方分権改革の流れの中で、県と市町村との連携・役割分担、または市町村ごとの連携を考えていく必要があります。この点について、県内市町村の現職議員、前職議員を交え、議論し、何らかの政策提言につなげていければと考えています。 また、若者世代が関心を持ち、または若者世代の声も選挙戦を通じて、発出していくことが大切であると考えています。そこで、若者世代にも議論に参加していただき、世代を超えて、新たな政策の方向性を考えていきたいと思います。

開催日時:2021年3月16日(火)19時~21時
開催方法  Zoom ウェビナー(事前登録制)先着100名様
お申し込みは、こちらから
ご登録後、ウェビナー参加に関する確認メールが届きます。
主催:ちばでも実行委員会(淑徳大学コミュニティ政策学部矢尾板俊平研究室)
共催:VOTE FOR CHIBA
パネリスト:水野実氏(千葉県浦安市議会議員) 高山敏朗氏(千葉県八千代市議会議員) 山本直史氏(前千葉県千葉市議会議員) 大学生
モデレーター:矢尾板俊平(淑徳大学コミュニティ政策学部教授)

議論内容
Part.1 千葉県知事選挙10の論点
Part.2 市議会議員からみた県と市との関係についての課題と期待
Part.3 各市が抱える課題と県との連携
Part.4 千葉県知事選挙、問われていない論点
Part.5 若者世代からの感想
Part.6 若者世代からの提案
Part.7 どうなる?投票率 どうする?投票率
視聴者からの質問への回答・フリーディスカッション
政策提言のまとめ

投票率と民意のはなし

 選挙のたびに話題になる「投票率」のはなし。私自身は、「投票率」は、民主主義のひとつの事象に過ぎないと思っています。日頃から、どのように社会に、地域に関わっているのか、社会や地域の意思決定プロセスの中で、自分自身の「幸せ」にアクセスする機会があるのか、また、そうしたプロセスが確保されているのかということによって、選挙に関心を持ったり、実際に投票のための行動が変わってくると思います。つまり、毎日の生活の中で、いかに自分の意見を表出し、決定に関わる機会が保障されているのか、ということが、結果として、投票率につながっているのだと考えています。
 重要なことは、自分の身の回りのことに関心を持ち、自分ができることで、そこに関わることだと思います。そうしたことの積み重ねが大切なのだと思います。
もうひとつ重要なことは、自分が投じた一票は、選挙の勝敗だけに影響を及ぼすわけではないということです。確かに、勝敗だけで言えば、自分が一票を投じたところで結果は変わらないかもしれません。しかし、当選者がどのぐらいの得票を得たのか、ということは、その後、当選者が自分の政策を推進する上で、大きな推進力になるということです。一方、落選者がどのぐらいの得票を得たのかということは、当選者の政策にブレーキをかけることになるかもしれません。
 まさに「民意」が「見える化」される瞬間でもあります。

『民主主義』という普遍的な価値を追い求めて

 「ちばでも」は、2012年衆議院総選挙時に、千葉1区立候補予定者公開討論会を開催したときから始まりました。淑徳大学コミュニティ政策学部の1期生有志と、当時、週1回、千葉みなと駅のタリーズコーヒーで「朝カフェ」を開催していた地域の有志の皆さんと一緒に手作りではありましたが、千葉1区から立候補を予定している候補予定者の方々にお集まりいただき、議論していただきました。
 翌年、2013年の参議院選挙は、選挙活動においてインターネットの利用が解禁された最初の国政選挙となりました。それまでは、インターネットの利用は、告示日前日の23時59分まで。後は、有権者は候補者の演説に足を運ぶしかありません。インターネット利用の解禁により、候補者は有権者と物理的な制約を超えて、対話を図ることができるようになりました。「ちばでも」では、千葉選挙区の立候補予定者にアンケートを実施し、政策比較表を作成し、WEBサイトに掲載しました。
 2016年の参議院選挙は、国政で初めて選挙権年齢が18歳に引き下げられた選挙となりました。今後、被選挙権年齢についても考えていくことで、若者の政治参画の可能性は高まっていくと思いますが、2012年から始まった「ちばでも」の歴史は、わが国の選挙制度が大きく変化した10年の歴史と重なります。
 「ちばでも」が目指すことは、有権者に「選択するための判断材料」を提供することです。そして、日本の民主主義を成熟させていくという壮大な夢を描いています。
 民主主義とは、政治制度のひとつでもありますが、その言葉には、普遍的な価値が込められていると思います。その価値とは、「社会は、あらゆる考え方や存在を受容し、法の下に平等であり、自由が保証された上で、選択を行っていくこと」であると言えます。
 多様な意見がある中で、自分の意見もしくは自分に近い意見が選択されることがあるでしょう。一方、そうした意見が選択されないこともあります。選挙に立候補すれば、時には勝利し、時には敗北するかもしれません。自分が応援している政治的プロジェクトが成功することもあれば、失敗することもあります。これらのことは、民主主義という普遍的な価値が成立しているからこそ、私たちは、何らかの行動ができ、また、自分たちの幸福を追求することができるのです。
 政治のことは難しい。自分が一票いれたところで何も変わらない。この社会はなんだか理不尽だな、たくさんの不満がある。こんな言葉を耳にします。まずは、自分の身の回りのことから関心を持ってもらいたいと思います。自分の一票では、国のことは何も変わらないかもしれないけれども、自分の身の回りのことに関心を持って、自分ができることをやってみることで、自分の身の回りにある問題は解決できるかもしれないし、何か変えることができるかもしれないのです。実は、自分の身の回りのことは、市区町村、都道府県などといった自治体の仕事に大きく関わっている可能性が高いですし、皆さんのひとつの行動は、そうした自治体の取り組みを変えることに影響力を持つかもしれません。
 「ちばでも」というプロジェクトは、そうしたことのひとつの「きっかけ」かもしれません。選挙は、18歳以上の誰もが自分の意見を投票という形で表現できる機会です。
 有権者に選択肢と対話を。「ちばでも」は、これからも民主主義という普遍的な価値を追い求めていきます。

淑徳大学コミュニティ政策学部教授
矢尾板 俊平