「生きる力」を身に付ける政策学的思考法

「生きる力」を身に付ける政策学的思考法‐これから、僕たちは、どのような世界で生きるのか ‐

AI、IoT、ロボットなどの技術が社会をどのように変化させていくか、その社会の変化と政策との関係をどのように考えていくか、社会が変化していく中で「コミュニティ」の役割は、ますます高まっていくという視点で、「未来技術、情報」と「制度、法律、経済」の関係を見たときに、どのような政策が必要になっていくのか研究をしています。社会のイノベーションと制度、法律、経済の仕組みとの間にギャップにこそ、政策論の必要性があると考えています。

オープンキャンパス 模擬講義

6月24日開催のオープンキャンパスで、模擬授業を行います!
11時40分頃からのスタートです。

「生きる力」を身に付ける政策学的思考法‐これから、僕たちは、どのような世界で生きるのか ‐

現在、AIやIoT技術の進展、さらには日本の政治経済状況、国際社会の情勢の変化の中で、私たちにはどのような未来が待っているのでしょうか。このような社会の変化の中で生きていくために必要な「政策学的思考法」を紹介するとともに、受講生の皆さんと一緒に、著しい変化の中で、私たちはどのように生きていくべきか、考えてみることで、皆さんの進路選択にお役に立てればと考えています。

淑徳大学オープンキャンパス情報は、こちらから

本当に強い大学2018(東洋経済新報社)

週刊東洋経済が毎年発行している臨時増刊「本当に強い大学2018」が、今年も発行されました。就職率ランキングを見てみると、文理融合系(人間科学、政治政策系」で、私たち「淑徳大学コミュニティ政策学部」が1位になりました。2位が愛知学院大学総合政策学部、3位が広島女学院大学人間生活学部でした。

 

 

 

「サービスラーニング教育とは何か」

 コミュニティ政策学部では、開設時から一貫して「サービスラーニング教育」を教育研究の軸として位置付けられており、私たちの教育の「原点」とも言えます。私自身は、特にこの4年間、サービスラーニングセンター運営委員長として、学生の皆さん、教職員の皆さん、そして学外のパートナーの皆さんのご支援を賜りながら、サービスラーニング教育の充実に向けて共に歩ませて頂きました。
 「サービスラーニング教育とは何か」。この「問い」への答えを、常に考えてきました。そして、その答えは、やはり本学の建学の精神である「利他共生」を実践するものでなくてはならない、ということを確信しています。「「利他共生」の精神を体現し、実践することにより、自らの成長を促す手段である」とも言い換えることができると思います。
さて、長谷川仏教研究所でのプロジェクトで石上善應先生が取りまとめられた『おかげの糸』の中に、「無財の七施」について紹介されておりました。
 大乗仏教の精神である「自利と利他」の実践方法の一つに「布施」があります。「布施」とは、必ずしもお金を持っている方だけができることではありません。お釈迦さまは「富者の万灯」よりも「貧者の一灯」に大変に感謝をされ、また喜ばれたようです。例えば、①人に対してやさしい視線をそそぐこと、②なごやかな表情、笑顔で人に接すること、③相手を喜ばせる言葉をかけること、④自分の身体を使い、人のためにつくすこと、⑤相手に対し、きめ細かな心づかいをすること、⑥道行く人に座席を用意したり、座席を人にゆずること、⑦泊るところを提供すること、の7つも「布施」であると説かれます。「布施」とは、何か特別なことではなく、私たちの日常の中で、当たり前にできること、そして少しの心構えでできることなのだと教えてくれます。私は本学のサービスラーニング教育とは、「布施」の実践であると考えています。サービスラーニング教育を通じて、人間としての豊かさも育んで頂きたいと思います。そのためには、特別な知識、スキルが必要なのではなく、日々の生活の中で、自分と他者を大切にする気持ちを持ち、行動に移すことができることが必要なのではないかと思います。公務員を目指される方も、民間企業を目指される方も、それ以外の道を目指される方も、このことには変わりありません。専門性を超えて、他者に寄り添い、共に歩むことができる「人間力」、「心」をしっかりと育む機会を得ることができるのが本学部の魅力でもあります。
 最後に「啐啄同時」という言葉を紹介します。雛が孵るためには、雛が卵の殻の中から殻をつつき音を出す「啐」と同時に、親鳥が殻をつつき、それを破ること(「啄」)が必要です。これは教育にも通ずることと思います。何か特別なことではなく、学生の皆さんと教職員の皆さんが一緒に心を合わせながら取り組み、成長をしていくことができる、これがサービスラーニング教育の要諦と思います。

2018年3月
淑徳大学サービスラーニングセンター運営委員長
矢尾板俊平
(コミュニティ政策学科長)

※淑徳大学サービスラーニングセンター年報第8号(2018年3月発行)「巻頭言」に掲載
(一部、加筆・修正)

他者の存在を通じて、自己の存在に気づく

 いま、世界は大きな変化に直面しています。英国では、昨年6月の住民投票の結果、EUからの離脱が決まりました。米国では、昨年11月にドナルド・トランプ氏が大統領選挙に当選し、本年1月に新大統領に就任しました。これから行われるフランス大統領選挙やドイツの国会議員選挙でも、何かしらの変化が起きるかもしれません。こうした変化の本質は、「グローバル化」、「多様性の尊重」、「民主主義」などの普遍的な価値に大きな変化を与えうる胎動が起きている中、私たちは、何を考え、どのように行動していくべきなのでしょうか。これまでの「秩序」が新たな「秩序」に向かうリメイクのプロセスの中に、私たちは存在しているように思います。
 日本国内に目を向ければ、2016年7月に行われた参議院選挙は、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて初めての国政選挙となりました。参議院選挙での投票率を見てみると、総務省の発表によれば、18歳、19歳の投票率は、全国で46.78%であり、20歳代の投票率と比べると、11ポイントほど上回る結果となりました。千葉キャンパスでは、2日間限定ですが、期日前投票所をキャンパス内に設置いただき、学生にとって、選挙や政治を身近に感じる機会となったことと思いますし、投票所の運営業務にサービスラーニングの一環として従事することができ、学びの機会を頂けたと思います。千葉市内の他大学においても、若者の投票率を向上させようと、様々な取り組みが行われたことと思います。お互いに、他大学の学生が取り組んでいることを知り、自分たちの取り組みをより良いものにしようという意欲が高まり、努力をしていく。こうした切磋琢磨する環境が生まれることは、学生の皆さんの成長にとって、とても大切なことだと思います。お互いに刺激をし合い、切磋琢磨していくことを通じて、新たなエネルギーを生み出し、イノベーションを起きていく。これは人類が歩んできた成長の歴史でもあります。大学教育の中で、このような環境をいかに作っていくか、これはサービスラーニングのプログラムを設計していく上でも、考えていくべき視点ではないかと思います。自分たちだけで学びが完結をしてしまうのではなく、他者の学びを知り、そこからも学んでいくことで、その学びはさらに深化していくと思います。
 サービスラーニングの取り組みを通じて、学生の皆さんに理解を深めて欲しいことは、自分の隣には、必ず他者が存在しているということです。他者の存在を通じて、自己の存在に気づくという体験なり、経験なりが重要だと思います。アイデンティティの確立は、異質なものが存在することにより、可能であると思います。サービスラーニングやPBLなどでの活動では、時に、相手に提案をするということもあり得ると思います。この時に、自分たちの視点だけで物事を見て、「もっともらしい」提案をしてしまうことがあります。本来は、そうではなくて、他者の価値観を前提にした上で、自分たちの視点から考え、提案をすることが重要なのです。サービスラーニング教育を通じて、このような訓練ができると良いと思います。
 世界や私たちを取り巻く環境が変化していく中で、変わらないことは、目の前には、現実の生活があり、そして課題があるということです。そこにある幸せ、さらには痛みに対して、私たちは何ができるのか。それを考えるためには、他者を知り、他者の存在を認識することで、自分を見つめ直し、自己に気づくという繰り返しが重要なのです。
 サービスラーニングセンター年報も第7号となり、サービスラーニング教育の知見が積み重なってきました。サービスラーニング教育の次なるステージへの発展に向けて、引き続き、皆様のご支援とご協力を頂きたく存じますので、なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。

2017年3月
淑徳大学サービスラーニングセンター運営委員長
矢尾板俊平
(コミュニティ政策学科長)

淑徳大学サービスラーニングセンター年報第7号「巻頭言」(2017年3月発行)に掲載。(一部、加筆・修正)

サービスラーニング教育と「3つの智慧」の教え

 今年の流行語のひとつに「18歳選挙権」という言葉がノミネートされるのではないか、というほど、毎日、新聞やテレビの報道で「18歳選挙権」という言葉を目にしました。昨年、公職選挙法が改正され、選挙権年齢が20歳から18歳以上に引き下げられ、新たに全国で240万人、千葉県内では約11万6千人の18歳と19歳の若者が有権者になりました。また法改正後、主権者教育の取り組みも進められ、私もいくつかの高校で主権者教育の授業をさせていただきました。淑徳大学千葉キャンパスでは、2日間限定ではありますが、臨時の期日前投票所が設置され、学生の皆さんが、期日前投票所の運営に関わりました。
 私自身が主権者教育のプログラムを通じて、高校生や大学生の皆さんにお伝えしてきたことは、「政治や選挙に、最初から興味や関心を持つのは難しいかもしれないが、まずは、身近な現実、目の前の現場に興味や関心を持ってみよう」というメッセージでした。当事者として、身近な現実、目の前の現場にある自分自身の「幸せ」、周りの人の「幸せ」に目を向けて、考えてみること、そして行動をしてみることが、主権者としての第一歩であると思います。
サービスラーニング教育を考えるときに、私は「聞・思・修」という3つの「智慧」の言葉を思い出します。「聞慧」とは、教えを聞くことで得られる智慧です。「思慧」とは思考する、自分の中で考えることから得られる智慧です。「修慧」とは、行動すること、実践することから得られる智慧です。こうした「聞・思・修」の3つの段階を経て、智慧は完成していくと考えられます。サービスラーニング教育では、社会の問題を知り、考え、行動すること、つまり「聞・思・修」の3つの段階をつなぐとともに、「修慧」から、新たな問題意識が寛容され、学ぶことへの動機、意識が高まることで、智慧の形成の循環を作り出すことができると思います。
 そこで生み出される意識や知識のひとつに、主権者としての意識や知識も含まれることでしょう。「選択」という行動は、現在を選択することだけではなく、現在を選択することによって、未来を選択することにもつながります。なぜならば、過去、現在、未来は、時間によってつながっているからです。過去の選択から学び、未来のことを考え、現在において選択するのです。そうした選択を可能にするのは、自己の中に持つ「種」を育み、そして芽を吹かせ、花を咲かせるというエンパワーメント型の教育を通じた「智慧」ではないでしょうか。このように考えると、サービスラーニング等の社会参画型の学びは、主権者教育においても重要な意義を持ちます。
 主権者教育とは、政治のことを学ぶ、選挙のことを学ぶことだけではありません。日々の生活の中で、いかに問題を発見し、その問題の解決方法を考え、選択し、行動するための知識やスキルを身に付けることであると思います。しかしながら、主権者教育では、どうしても政治のことを学ぶ、選挙のことを学ぶことに偏ってしまいがちです。ここで、少し立ち止まり、真の「主権者教育」の在り方を、「聞・思・修」の3つの智慧の言葉を思い出しながら、サービスラーニング教育を通じて、どのように展開をしていくのかを考える機会ではないかと思います。

2016年3月
淑徳大学サービスラーニングセンター運営委員長
矢尾板俊平
(コミュニティ政策学科長)

淑徳大学サービスラーニングセンター年報第6号(2016年3月発行)「巻頭言」に掲載
(一部、加筆・修正)

「知行合一」とサービスラーニング

 2010年4月のコミュニティ政策学部の開設とともに、サービスラーニングセンター(SLC)が設置され、5年が経ちました。コミュニティ政策学部におけるサービスラーニング教育も、試行錯誤を繰り返しながら、一歩ずつではありますが、芽が吹き、花を咲かせようとしています。コミュニティ政策学部の基礎を築くとともに、サービスラーニング教育の種を蒔かれ、4年間、温かく育て続けていただいた前学部長の磯岡哲也先生、前学科長・前SLC運営委員長の石川久先生に心から感謝を申し上げます。また、SLCの現場においては、前SLCセンター長の石川紀文氏にご尽力を頂き、学生が地域の中で学ぶ多くの機会を創出いただきました。氏のご貢献にも感謝を申し上げます。そして、本学のサービスラーニング教育は、地域の皆様、千葉市を始め自治体の皆様、企業の皆様、NPOの皆様の温かなお力添えがあって始めて成り立つものです。常日頃より、本学のサービスラーニング教育にご理解を頂き、ご支援を賜っている皆様に、心より御礼を申し上げます。
 さて「知行合一」という言葉があります。現在、NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」では、吉田松陰と松下村塾の志士たちの物語が描かれておりますが、松下村塾には「知行合一」と書かれた掛け軸があったようです。そもそもは王陽明の「伝習録」の中に記された言葉で、この言葉は、吉田松陰の門下生の志士たちの情熱を大きく駆り立てたのではないかと想像します。
 「伝習録」の中で王陽明は、徐愛からの問いかけに対し、「そもそも知っている以上、それは必ず行ないにあらわれるものだ。知っていながら行なわないというのは、要するに知らないということだ」、と説きます。
 私たちは、日々の学びの中から、多くのことを情報として得ています。そして、新たな気づきや発見をしていきます。だからこそ、学ぶ、さらには研究を積み重ねることは大変楽しいことです。しかし「知行合一」という考え方から見れば、この段階では、まだ「知らない」状態であるのと変わらないということでしょう。「知った」ということは、それが「行ない」、すなわち「実践」「行動」が伴っていなければならない、「知」と「行」が分離不可能なものであると説いています。さらに「知は行の主意、行は知の功夫、また知は行の始、行は知の成である」と説きます。この言葉を「知」は「行」のきっかけとなり、「行」は「知」の実態を現す、と解釈することができます。
 本学のサービスラーニング教育は、本学の建学の精神である「共生」、さらには学祖長谷川良信先生の教えである「together with him」を具現化した教育プログラムでなければならないと考えています。まさに「共生」、「together with him」という「知」をサービスラーニング活動や、さらに言えば教職員・学生の日々の生活で実践するという「知行合一」を通じて、本学の建学の精神、学祖長谷川良信先生の教えを学んでいきたいと思います。
 徐愛からの問いかけに対する王陽明の言葉の中には、サービスラーニングのプログラムを設計するにあたり、忘れてはならない言葉を見つけることができます。それは、「思惟省察」という言葉です。サービスラーニング教育とは、ただ体験をすることではありません。その学修プロセスの中に、しっかりと「思考」と「省察」の機会を組み込んでいくことが重要であることに、改めて気づかせ、教えてくれます。
 地域の中で、地域の皆様と共に考え、共に学び、共に感じ合い、課題を発見し、その課題解決に情熱を持って主体的に関与・実践していく、そのような「知行合一」を通じて、引き続き、私たち教員も学生も学び、成長をしていきたいと考えております。

2015年3月
淑徳大学サービスラーニングセンター運営委員長
矢尾板俊平
(コミュニティ政策学科長)

淑徳大学サービスラーニングセンター年報第5号(2015年3月発行)「巻頭言」に掲載
(一部、加筆・修正)

センター年報発行の意義

 多くの関係者の皆様のお力添えにより、無事に『淑徳大学高等教育研究開発センター年報』を創刊することができました。私自身、学内の年報の創刊に関わるのは、2010年度に創刊した『淑徳大学サービスラーニングセンター年報』に続き、2冊目になります。編集後記に代えて、私が2つのセンター年報の発刊に関わる中で、「センター年報」とは、どのような「性格」、「ツール」であるべきかという私見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、「センター年報」はPDCAサイクルの「ツール」として活用できるようにすることが必要なのではないかと思います。とりわけ、センター年報の役割は、1年間の活動(P→D)の記録を「見える化」することにより、C(測定・評価活動)につなげていくことであると考えています。そのため、各年度の「到達目標」を明示化し、1年間の活動をまとめることで、その「到達目標」が達成できたかどうかを確認し、達成できていれば、その「成功要因」を明らかにすることで、次年度以降の活動にも活かしていくことができると思います。一方、「到達目標」が達成できていないものがあれば、その「要因」を検討することで、次年度以降の活動において、「改善」(PDCAサイクルの「A」の活動)が可能になり、活動そのものを発展させていくことができると思います。
 本センター年報の編集においても、この点においては、さらに改善していく必要があると認識しており、その反省を第2号に活かしていきたいと考えています。
 次に、本センター年報では、学内外の様々な高等教育に関わる研究成果、事例・実践からの知見を集め、高等教育に関わる研究や手法を向上させていくためのオープンで学術的な議論の場を設けることです。ここで言う「オープン」の意味は、立場も年齢も関係なく、自由闊達な議論ができるということです。「新しいアイディア」を生むためには、たくさんの「知識」や「情報」を集め、有機的にそれらを結び付けながら、創造的な活動を行っていく必要があると思います。現在、多くの大学でラーニングコモンズが設置されていますが、ラーニングコモンズは、そうした「創造的な」学びの環境を学生の皆さんに提供するためのものです。こうした「知識創造」のプロセスを支える「ツール」としての役割も、本センター年報にはあると考えられています。
 本センター年報の発刊に関われた多くの皆様のご協力とご支援に心より感謝申し上げます。

『淑徳大学高等教育研究開発センター年報』編集委員会委員長
矢尾板 俊 平(コミュニティ政策学部准教授)

※淑徳大学高等教育研究開発センター年報第1号(2014年3月)「編集後記」に掲載
(一部、加筆・修正・削除)