「知行合一」とサービスラーニング

 2010年4月のコミュニティ政策学部の開設とともに、サービスラーニングセンター(SLC)が設置され、5年が経ちました。コミュニティ政策学部におけるサービスラーニング教育も、試行錯誤を繰り返しながら、一歩ずつではありますが、芽が吹き、花を咲かせようとしています。コミュニティ政策学部の基礎を築くとともに、サービスラーニング教育の種を蒔かれ、4年間、温かく育て続けていただいた前学部長の磯岡哲也先生、前学科長・前SLC運営委員長の石川久先生に心から感謝を申し上げます。また、SLCの現場においては、前SLCセンター長の石川紀文氏にご尽力を頂き、学生が地域の中で学ぶ多くの機会を創出いただきました。氏のご貢献にも感謝を申し上げます。そして、本学のサービスラーニング教育は、地域の皆様、千葉市を始め自治体の皆様、企業の皆様、NPOの皆様の温かなお力添えがあって始めて成り立つものです。常日頃より、本学のサービスラーニング教育にご理解を頂き、ご支援を賜っている皆様に、心より御礼を申し上げます。
 さて「知行合一」という言葉があります。現在、NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」では、吉田松陰と松下村塾の志士たちの物語が描かれておりますが、松下村塾には「知行合一」と書かれた掛け軸があったようです。そもそもは王陽明の「伝習録」の中に記された言葉で、この言葉は、吉田松陰の門下生の志士たちの情熱を大きく駆り立てたのではないかと想像します。
 「伝習録」の中で王陽明は、徐愛からの問いかけに対し、「そもそも知っている以上、それは必ず行ないにあらわれるものだ。知っていながら行なわないというのは、要するに知らないということだ」、と説きます。
 私たちは、日々の学びの中から、多くのことを情報として得ています。そして、新たな気づきや発見をしていきます。だからこそ、学ぶ、さらには研究を積み重ねることは大変楽しいことです。しかし「知行合一」という考え方から見れば、この段階では、まだ「知らない」状態であるのと変わらないということでしょう。「知った」ということは、それが「行ない」、すなわち「実践」「行動」が伴っていなければならない、「知」と「行」が分離不可能なものであると説いています。さらに「知は行の主意、行は知の功夫、また知は行の始、行は知の成である」と説きます。この言葉を「知」は「行」のきっかけとなり、「行」は「知」の実態を現す、と解釈することができます。
 本学のサービスラーニング教育は、本学の建学の精神である「共生」、さらには学祖長谷川良信先生の教えである「together with him」を具現化した教育プログラムでなければならないと考えています。まさに「共生」、「together with him」という「知」をサービスラーニング活動や、さらに言えば教職員・学生の日々の生活で実践するという「知行合一」を通じて、本学の建学の精神、学祖長谷川良信先生の教えを学んでいきたいと思います。
 徐愛からの問いかけに対する王陽明の言葉の中には、サービスラーニングのプログラムを設計するにあたり、忘れてはならない言葉を見つけることができます。それは、「思惟省察」という言葉です。サービスラーニング教育とは、ただ体験をすることではありません。その学修プロセスの中に、しっかりと「思考」と「省察」の機会を組み込んでいくことが重要であることに、改めて気づかせ、教えてくれます。
 地域の中で、地域の皆様と共に考え、共に学び、共に感じ合い、課題を発見し、その課題解決に情熱を持って主体的に関与・実践していく、そのような「知行合一」を通じて、引き続き、私たち教員も学生も学び、成長をしていきたいと考えております。

2015年3月
淑徳大学サービスラーニングセンター運営委員長
矢尾板俊平
(コミュニティ政策学科長)

淑徳大学サービスラーニングセンター年報第5号(2015年3月発行)「巻頭言」に掲載
(一部、加筆・修正)