コミュニティ政策学部では、開設時から一貫して「サービスラーニング教育」を教育研究の軸として位置付けられており、私たちの教育の「原点」とも言えます。私自身は、特にこの4年間、サービスラーニングセンター運営委員長として、学生の皆さん、教職員の皆さん、そして学外のパートナーの皆さんのご支援を賜りながら、サービスラーニング教育の充実に向けて共に歩ませて頂きました。
「サービスラーニング教育とは何か」。この「問い」への答えを、常に考えてきました。そして、その答えは、やはり本学の建学の精神である「利他共生」を実践するものでなくてはならない、ということを確信しています。「「利他共生」の精神を体現し、実践することにより、自らの成長を促す手段である」とも言い換えることができると思います。
さて、長谷川仏教研究所でのプロジェクトで石上善應先生が取りまとめられた『おかげの糸』の中に、「無財の七施」について紹介されておりました。
大乗仏教の精神である「自利と利他」の実践方法の一つに「布施」があります。「布施」とは、必ずしもお金を持っている方だけができることではありません。お釈迦さまは「富者の万灯」よりも「貧者の一灯」に大変に感謝をされ、また喜ばれたようです。例えば、①人に対してやさしい視線をそそぐこと、②なごやかな表情、笑顔で人に接すること、③相手を喜ばせる言葉をかけること、④自分の身体を使い、人のためにつくすこと、⑤相手に対し、きめ細かな心づかいをすること、⑥道行く人に座席を用意したり、座席を人にゆずること、⑦泊るところを提供すること、の7つも「布施」であると説かれます。「布施」とは、何か特別なことではなく、私たちの日常の中で、当たり前にできること、そして少しの心構えでできることなのだと教えてくれます。私は本学のサービスラーニング教育とは、「布施」の実践であると考えています。サービスラーニング教育を通じて、人間としての豊かさも育んで頂きたいと思います。そのためには、特別な知識、スキルが必要なのではなく、日々の生活の中で、自分と他者を大切にする気持ちを持ち、行動に移すことができることが必要なのではないかと思います。公務員を目指される方も、民間企業を目指される方も、それ以外の道を目指される方も、このことには変わりありません。専門性を超えて、他者に寄り添い、共に歩むことができる「人間力」、「心」をしっかりと育む機会を得ることができるのが本学部の魅力でもあります。
最後に「啐啄同時」という言葉を紹介します。雛が孵るためには、雛が卵の殻の中から殻をつつき音を出す「啐」と同時に、親鳥が殻をつつき、それを破ること(「啄」)が必要です。これは教育にも通ずることと思います。何か特別なことではなく、学生の皆さんと教職員の皆さんが一緒に心を合わせながら取り組み、成長をしていくことができる、これがサービスラーニング教育の要諦と思います。
2018年3月
淑徳大学サービスラーニングセンター運営委員長
矢尾板俊平
(コミュニティ政策学科長)
※淑徳大学サービスラーニングセンター年報第8号(2018年3月発行)「巻頭言」に掲載
(一部、加筆・修正)