国内で新型コロナウイルス感染症の影響が拡大している。市中の店舗からは、マスクやアルコール消毒液が姿を消した。その後、ティッシュ、トイレットペーパーやキッチンペーパーなどの紙用品も見なくなった。あたかも1970年代のオイルショックの再来のようである。
当時と異なるのは、SNS(ソーシャルネットワークサービス)の存在である。SNSを通じて、それが根拠のない偽情報であったとしても、瞬間的に人々の間に伝播していくようになった。たくさんの人が語ることで、そこに真実味が生まれ、それが信じられる情報へとも変わってしまう。これが人々が抱える不安感を一層高めてしまい、店先に商品があれば、「すぐに必要でなくても、買っておこう」という行動へと変えていく。この負の連鎖を、断ち切ることはなかなか難しい。
生産量が増加して、本来は需要を満たすだけの供給量があるはずなのに、市中の店舗で、自主的に「お一人様につき一個まで」という販売規制をかけているはずなのに、品不足は続いている。こうした自主規制だけでは、生活関連物資の不足は解消されず、国民生活に大きな影響を与えかねない。人々の不安な心理による買い占めも原因のひとつだが、転売目的の買い占めの影響も大きい。WEBのECサイトやオークションサイトなどには、市中の店舗から消えたはずの商品が高値で販売されている。リアルな世界の市場とは別に、ネット上にもう一つの市場があることもオイルショックの時代とは異なることだ。
オイルショックの遺産と呼ぶべきか名残と呼ぶべきか「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」と「国民生活安定緊急措置法」という法律がある。 「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」 では生産事業者や販売事業者が買占めや売惜しみにより保有する特定の生活関連物資について、内閣総理大臣若しくは主務大臣が売渡し先を定めて、売渡しを指示することができる。その指示に事業者が従わなければ、さらに厳しく売渡しを命じることができる法律だ。
「国民生活安定緊急措置法」は、価格を安定させるために、標準価格を決定し、標準価格よりも高額の販売価格を設定する事業者に課徴金を課すことができる法律だ。
すでに経済産業省は、これらの商品について、オークションサイト事業者に出品の自粛を呼び掛けている。新型インフルエンザ等対策特別措置法の第59条には価格の安定等のために、これらの法令に基づき、適切な措置ができることが定められている。
マスクの供給不足を解消するために、これらの法令に基づき、一時的に転売価格の規制を実施する必要があるのではないか。